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遷宮の思い出(三)

三顧の礼

私が当宮に奉職した経緯は先代宮司木原邦雄先生、秋山、大穂、不破総代が私の奉務神社の宮司や私に対して三顧の礼のように、丁寧に足を運んでいただいたことが一番のきっかけでした。

神主が神社を移動するのは、一般的な社会では会社を変わるのに相当します。各神社は個々に独立しています。それで一社一社が別の事業体なので、神社を変わることは転勤にはあたらず、業界、職種が同じところに再就職した事になります。

その中で、私の為に奉務先の神社に挨拶とお願いと度々足を運んでいただいたのは、感激の極みでした。そして、そこまでして私を迎えていただく理由がありがたくも驚く内容でした。

髙宮八幡宮は那珂郡の惣産土として神格の高い神様を祀っているので、必ず神主を置くというのが古くからの約束事であり、それゆえ退職した神主や年金生活で余裕のある方に神主資格を取って頂いたりして、戦中戦後も必ず神主の常駐する神社として守られてきたそうです。

そして、故木原宮司が奉職されてより高神様の居る神社という伝承を裏付けるかのように、霊験あらたかな事が続き、神主資格があるだけでなくきちんとした実務経験があり、強い信仰心のある神主でなくてはとても務まる神社でないと思われたそうです。

さらに神主の給与さえ充分に支払えない中、本殿、拝殿、社務所、参集殿、神饌所すべての建物がシロアリの被害で修復不能な状況でありました。もちろん建物を建設する余裕など一切ない状態でした。木原宮司と戦前生まれ神社役員は自分たちが元気で居る今のうちに、遷宮事業を行わないと二度とできなくなると思われたそうです。それで是非とも責任を持ってそれをやってくれる神主を探していたので、無理を承知であなたに頼みたいと言われました。

本当にありがたいお話で、恐縮の極みであり、人生の中で二度とこんな事は無いだろうと思い、ぜひに承ろうと思ったもののあまりにも現実離れした話でした。